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モデルの仕事というのは「撮影」すること


NAOKI:今日、エルザに与えたテーマは「私服」「好きにポーズを決めていい、

「どういう写真を撮影するのかは僕に指示をしていい」という3つ。どう? 緊張してる?


佐々木えるざ:緊張してますよ〜。カメラマンの人に指示していいなんて撮影は初めてだし、

どう指示していいのかわからない。


NAOKI:「カメラマンに好きなように指示する」というのは、実はキャリアのあるモデル

でも難しいんだよ。「mina」という雑誌で雑誌関係なくモデルが登場する「REAL FACES」

という連載を10年近くやっているんだけど、それと同じやり方なんだよね。どんなモデルでも

必ず迷ってるから。モデルって指示されて、服を着せられて、撮影されることには慣れている

けれど、自分でこうしたい、というのを言うことにはまったくもって慣れていないからね。

とくに日本のモデルはそういう傾向にあるね。


えるざ:とにかく自然体で、脱力して、抽象的ですけどカッコイイ……そんな写真を撮りたくて。


NAOKI:僕はカメラマンとしてどうすればいいの?(笑)


えるざ:ですよね……。










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NAOKI:さっきの「REAL FACES」では今日と同じコンセプトで、錚々たるモデルがこれまでに

150人以上登場してきたけれど、当然何時間も悩むコもいるし、ポラだけで数十枚撮影するコもい

る。打ち合わせ段階から混乱したり、撮影中に茫然として立ちつくすコもいる。撮影中はスタッフ

といえども感想すら言わない。本当に自分で判断していく。だから悩む。

いつものように「いいね」「かわいいね」なんて誰も言ってくれない。



えるざ:それはいやだな……どう思われてるのかは知りたい。



NAOKI:それを自分で判断できるのがいいモデルだと思うね。

判断基準が自分の中にないから、不安な気持ちにとらわれてしまうんだから。

それ一つとっても「自分で自分の見せかたを分かってるコ」というのはプロのモデルでも

少ないし、迷うんだ。それだけ人の評価を気にしてしまう。ひとつ言えるのはこのコは売れてる、

あるいは売れていくだろうなっていうコは悩まないし、自分でどうすればいいのか分かってるし、

読者をはじめ、そのページを見る人たちへの

「見せかた」をよく知っている。それはもう一つの傾向でもあるよね。

自分の宣伝の仕方をよくわかってるんだよね。




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えるざ:うーん……プレッシャーですよ、それ(苦笑)。今日はですね、

リラックスしつつもかっこいい自分を見せたいなと。脱力っていうかなんていうか?


NAOKI:そのためにはどうすればいい?


えるざ:髪もこのままで……メイクも普段のメイクで、シンプルにTシャツに…

パンツのラインはかっこよく見せて……自然体で。「いつもの自分」がテーマ。決めてない、

けど決まってるっていう。


NAOKI:僕はどう撮影すればいい?


えるざ:最初は…全身でお願いします。












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まずは与えられた課題に対して、エルザ自身が思うイメージを周りに伝えていく。わからないと言いながらも撮影に向かう準備を整えた。

NAOKI::ひとこと言っておくと、これから1年言い続けたいことは、

モデルの仕事って撮影されることなんだよね。「撮影」が仕事だから。

そこに向かってどう準備するかなんだよね。まずは撮影してみるけれど、ずっとそれを僕は

言い続けていくはずだよ。まずは与えられた課題に対して、エルザ自身が思うイメージを周りに

伝えていく。わからないと言いながらも撮影に向かう準備を整えた。

Daylight Studio Nakameguro

太陽光が1日中入る都内の自然光スタジオ

LinkIconDaylight Studio Nakameguro


まずは自分のモデルとしての「欠点」を知りつくすこと


えるざ:ハア、終わった。すごい疲れました。脱力してるとこを見せたいんだけど緊張してて。


NAOKI:どっちなんだエルザは(笑)。











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エルザのファーストショット。メイク、ヘアースタイル、衣装、ポージングすべてがエルザの考えてきたモデルの姿。この写真からNAOKIは「弱点」というポイントで切り出した。

えるざ:クールにかっこいい感じにしたつもりです。


NAOKI:じゃあ今、撮った写真を見ながら話そうか。

まず、エルザは自分のモデルとしての弱点は何だと思う?


えるざ:え??このアゴですかね。太って見えるし……いつも気にしてます。


NAOKI:いつも言うことなんだけど、どんなスーパーモデルでも弱点って必ずあるんだよね。

逆に完璧なモデルって今まで二人だけ出会ったことがあるけれど、二人とも世界では

通用しなかった。弱点を知ってる、隠し方を知ってる、自分を知ってるモデルのほうがある意味、

ハングリー。えるざの弱点はアゴじゃないよ。


えるざ:そうなんですか??


NAOKI:今日、髪をダウンスタイルにしてきたでしょ?まずそれが大きな間違い。

しかもセンターパーツなんだよね。

モデルとしてのヘアスタイルとしてもうセレクトを間違えいる。


えるざ:モデルは髪が長いほうがいろいろなお仕事が来るのかなって。


NAOKI:その髪をまとめて首をだしてごらん。あるいはサイドに髪をまとめて、

首を見せてごらん。首から肩にかけてのラインがきれいに見えるはずだから。


えるざ:(鏡を見ながら髪を上げる)あ、本当だ!!首が長い!







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NAOKI:弱点ってエルザが思ってるアゴが実は、髪を上げて首を出すだけで変わるでしょ。

そのエルザの特徴を生かせば目立たないし、弱点が隠れていいところが余計に見えてくるでしょ?

今のTシャツをシャツに変えてみて。襟が入るだけで、さらに首もアゴも見えかたがまったく

変わってくるから。シャープに見えるでしょ。

僕がえるざならそういうスタイリングをしてみるね。

マニッシュでかっこいいって、ポーズだけじゃ出ないよ。


えるざ:まったく気付かなかった……確かに……アゴが気にならないです。


NAOKI:すべてはそういう理論のもとに撮影してるから、普段は(笑)。

でもそういうカメラマンばかりじゃないでしょ。毎回撮る人が変わるのがプロの現場なんだから。


えるざ:そうしたら撮る人が変われば、見え方も変わっちゃいますよね?


NAOKI:そうそう。それでいちいち変わってたら、まず雑誌の専属モデルとしては

絶対に使ってくれないよね。最下層から這い上がっていかなきゃいけないのに、

そんな気にするポイントがたくさんあったら、服も選びにくいし、使いにくい。







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NAOKIは「見える弱点」をエルザに伝える。鏡を使いながら客観的にどこか弱点となるのかを的確に指摘した。

えるざ:そういうものなんですね……。


NAOKI:今のエルザなら、その首から肩のラインがキレイだから、

そこに気づけばいずれ着物のカタログのモデルとしては声がかかるようになっていくとは

思うけどね。弱点と長所を俯瞰から分かること、自分を把握するだけでも仕事が一つ増える。


えるざ:着物のモデルか……。雑誌の専属モデルをやりたいんですけど。


NAOKI:今のまま、この髪型とスタイリングでオーディションにいっても絶対に無理だね。

カラダの弱点は理論的に隠すことができるレベルだったらなんとかできる。


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えるざ:落ちたことを「アゴ」のせいにしそう……(苦笑)。

勘違いしたまま無駄な時間を過ごしていくとこだった!


NAOKI:エルザの弱点は、そうだな、ひとことでいえば「その弱点に気付いてないこと」

が弱点(笑)。今日の段階ではそうだね。自分をモデルとして客観的に見つめていないんだよね。

それって厳しく言えばモデルとしての努力なんて何もしていないことと一緒だよ。