chanelxworkshop

「モデルとファッションは密接な関係にある。すなわちCHANEL
にとっても身近な存在である。
しかし、今日私が話したいことは”ファッション”についてで
はない。”人生に対する向き合い方”である。これからどうや
って生きるのか、どんな道を歩むのか。その手伝いをしたいん
だ。」
CHANEL GINZAで行われた今回のworkshop。そこに介した100
人を超える日本人モデルを前に、コラス氏は柔らかい語り口調
で話し始める。
「自分の考え方を信じ、生きた女性ココ・シャネル。彼女のス
ピリットを今みんなに伝えたい。」


1. 頑張らない日本人

workshopはこんな厳しい言葉から始まった。
「今の日本人は味気ない。」
コラス氏が初めて来日したという40年前。日本は生き生きと
した人間で溢れていたのだという。自分のため・国のため・家
族のため、人々はとにかく懸命に生きていた。
「あの頃私は、ハングリーに生きる多くの若者と出会った。そ
して彼らには共通して圧倒的なオーラが在ったものである。彼
らの目に宿る輝きはあまりにも素晴らしいものだった。何かを
起こそう・生み出そうとそれぞれの夢に向かってとにかく頑張
っていたものだ。」
(補足ではあるが、その若者たちの何人かは日本を代表する企
業の創設者としても有名であり、この国を牽引してきた偉大な
る人物たちだ。)

では、今の日本人はどうであろうか?
「全然頑張っていない。」それがコラス氏の答えである。
40年前の日本と今の日本。その大きな違いのひとつはやはり
情報のグローバル化であろう。インターネットや各メディアを
通し、欲しい情報は瞬時に手に入る便利な世の中であることは
当たり前になった。しかしコラス氏は指摘する。
「今の日本人。とりわけ多くの若者は、この国から出ない上に
挑戦もしない。しかし島国である日本の人間は、とにかく外に
出て”世界”を知るべきだ。他人の情報ではなく、自分自身で
物事を追求しなければならないのである。それなのに何故、外
に出る努力をしないんだ?」

頑張らない日本人が多いことは事実である。多くの若者が、冒
険よりも”安定”を・勉強よりも”楽”を選ぶ。
「特に今の日本の男はどうしようもないですよ。・・こんにゃ
く?・・いや、柔らかいお豆腐と同等だ(苦笑)
テレビは見るけど外には出ない。ゲームはするけど旅をしない
。何をするにも面倒だと口を揃えて言う。そんなの、男のある
べく姿じゃないだろう!」

時代が変化するにつれ、大切なことを忘れてしまった日本人。
かつての若者に在った目の輝きはどこに消えてしまったのであ
ろうか。




2. 魅力が無い日本人モデル

では日本人モデルにはこの数十年間でどのような変化があった
のだろうか。コラス氏は30年前のパリコレについて話してく
れた。
「当時のランウェイは日本人モデルで溢れていた。彼女たちは
たとえその国の言語を習得していなくとも、とりあえず日本を
出て1年でも2年でもパリやニューヨーク、ミラノに挑戦して
いた。圧倒的にハングリーでしたよ。」
ところが今のコレクションは・・
「ランウェイに登場するアジア人モデルのほとんどが、中国人
か韓国人であることが事実である。つまり日本人モデルが世界
に挑戦していないんだ。」

これはコレクションモデルに限らない。多くの日本人モデルに
元気がない事実は、こんなエピソードにも顕著に表れているの
である。
(動画「オーラがない日本人モデル」)

コラス氏は、他のアジア人モデルにあって日本人モデルに無い
ものを、自身が放つ「オーラ」であると言った。
”オーラ”はフランス語で”allure”。この”allure”という
単語には”魅力”や”魅力的”というニュアンスも含まれてい
るという。つまるところ、今の日本人モデルには”魅力がない
”ということだ。
魅力が無い日本人モデル・・。悲しい現実を突きつけられたの
である。
「今ここにいるモデルの皆さんは、すでに自然から授かった外
面の美しさがある人たちである。それはとてもラッキーなこと
。大切にしなさい。しかしこれからあなたたちは、外面の美し
さだけではなくて内面から”美”が溢れる女性にならなければ
ならないことを知りなさい。」

心の内側に在る美しさが体の外側に現れた時、初めて女性は「
オーラ」を身に纏うのかもしれない。


3.最強のオーラの持ち主は女性の味方!

最強の「オーラ」を身に纏った一人の女性がいる。CHANEL創業
者、ココシャネルである。
彼女と実際に仕事をした人は口を揃えて「とんでもないオーラ
の持ち主だった」と言うそうだ。
コラス氏も言う。
「私は直接彼女に会ったことはありません。しかしいつもいつ
でも心の中にココシャネルを感じています。
100年経った今尚も彼女の影響力は計り知れない・・。それ
って凄いことだと思いませんか?」

今でこそ女性の立場を尊重する考え方が広がり、男女が”平等
”で在るべき世の中であることが当たり前になった。
すなわち、
女性だから出来ない!
女性だから許されない!
女性だからこうあるべきだ!
そんな考え方は古くなった。
女性だって男性と同じように働くし、挑戦するし、夢を持つ。
もしかしたら男性から見ると、女性を「脅威」に感じるかもし
れない。
それくらい今、自立をしたパワフルな女性が増えていることは
周知の事実だ。
(女性の大きな知恵と経験がより男性を頼りなくし、結果、消
極的な男性が増え、ついには「こんにゃく男」や「お豆腐男」
が誕生してしまっているのかもしれない!)
・・いずれにせよ、時代が変わったことに違いはない。

女性は”自由”である。

ではご存知だろうか?
女性の”自由”に対して一役買っている人物こそ、ココシャネ
ルだということを。
「彼女が時代を変えた。女性の”自由”を”ファッション”と
いう観点から解放したのです。」



4.ココシャネルの軌跡と信念

元々、洋裁が得意だった。
その抜群のセンスと細やかな技術がセレブの間で話題となり、
ついにはフランスのカンボン通りに帽子専門店「シャネル・モ
ード」を開店することとなる。
1910年、シャネル27歳のことだった。
瞬く間に彼女の評判は広がり、なんと4年後にはフランスのリ
ゾート地、ドーヴィルにココシャネル初のファッションブティ
ック「ガブリエル・シャネル」を開店。

「あの頃は、女性に”自由”が無い時代でした。現代とは全く
違う世界だったのです。
スポーツはおろか外出さえも許されない。当然、女性たちのフ
ァッションにもスタイルが無く、あまりにも退屈なものだった

女性は、ただの、男性の添え物でしかなかったのです。」

ココシャネルはそんな時代に対して怒っていた。
女性も、男性と同じくらい自由で在るべきだと考えていた。
彼女は決断した。行動に移した。
当時、女性が揃って身につけていたコルセットを解放したので
ある。
それは同時に女性の”自由”の解放を訴えることでもあった。
「彼女は全てを変えたのです。女性のスタイルを・ファッショ
ンを・生き方を。時代に逆らい、女性も男性と同じくらい”自
由”であることを訴え続けました。
彼女の心にはずっと”自由”という名の信念が根付いていたの
です。」

ココシャネルは信念をぶらさなかった。
その後、ジャージ素材・パンツスーツ・リトルブラックドレス
・ジャケット・イミテーションジュエリー・・と、当時タブー
であったスタイルを立て続けに提案していく。
「彼女の快進撃は、決して揺れ動くことの無い”信念”があっ
たからこそ。そしてそれは現在のCHANELにも生き継がれていま
す。
つまり、ココシャネルという一人の女性が、今尚多くの人々の
心を突き動かしているのです。」

余談ではあるが、ココシャネルの信念を顕著に表すエピソード
がある。
実は誰もが馴染みのあるサンプロダクト(日焼け止め)を一番
始めに発売した人物は、何を隠そうココシャネルなのだ。
〜〜女性だって男性と同じようにスポーツをするし、海水浴だ
ってする。なぜなら私たちは”自由”という名のもとに生まれ
ているのだから!!〜〜
そんな彼女の声が聞こえてきそうな逸話である。


5.オーラの原点

さて、ココシャネルが「最強のオーラの持ち主」であることは
前述した通り。
ではその「オーラ」の源は一体どこにあるのだろうか?
ルーツは幼少時代にあるという。

「幼い頃に母親を亡くし、その後父親にも捨てられた孤児ココ
シャネルはカトリック教の修道院に引き取られ、育ちました。
そこで培われた考え方が彼女の心を支えていたのではないかと
私は思います。」

彼女が大切にしていた考え方とは、全ての物・全ての人間に対
して・・

・礼儀正しくある事。
・規律を守る事。
・シンプルである事。
・平等である事。
・自由である事。

これは、カトリック教の基本理念とよく似ている。

・Discipline(規律、礼儀の正しさ)
・Rigueur (厳格、厳しさ)
・Austerite(シンプル、白黒)
・Egalite(平等)
・Liberte(自由)

まさにこれが「とんでもないオーラの持ち主」ココシャネルの
原点である。
幼少時代から培われていたこの考え方こそが、実は彼女の原動
力となったのではなかろうか。
きっと、孤児というコンプレックスもあっただろう。
隣の芝生が青く見えることも、幾度となくあっただろう。
しかし、決して恵まれていたとは言えない環境で育ったことが
、彼女を強くした。

固定観念を取っ払い、自らの内なる「魂」と向き合えた時。初
めて人間は人生を前に前に突き進むことができる。
そしてその歩みの先に在るものこそ、ひとりの人間としての「
オーラ」や「魅力」なのではないか?


6.自分というブランドを磨く

コラス氏は言う。
「いい子になるな! いい子でいることは、自分を殺すことと
同じである。
あなたたちには、あなただけの美しさが在る。ひとりひとりに
は大きな価値があるのです。まずはその事実を理解し、自分だ
けの価値を見いだす努力をしなさい。」
私たちは、籠の中の鳥になる必要は、ないのである。

もしかすると。ココシャネルがそうであったように、「自分と
いう人間」はすでに「ひとつのブランド」なのかもしれない。
そのブランド価値を高められるか否かは全て自分次第。これか
ら先の、己の生き方による。
壁にぶち当たるときもある。他人に邪魔をされることもある。
それでも自分というブランドを磨く努力を怠ってはいけない。

コラス氏は最後に、大切なメッセージを教えてくれた。
「自分の外面と内面がいかにひとつになっているか・・それが
、自分自身が幸せになる唯一の方法なのです。
私は今改めて期待している。この場所にいる全ての日本人モデ
ルの皆さんが、自分らしい人生を築ける女性となることを。あ
なたのスピリットを大切に、歩みなさい。」

モデルとして、一人の人間として輝く。
与えられた美。
培っていく美。
挑戦すること。
殻を破ること。
さあ、今こそ人生に対する向き合い方を変えるチャンス。
そう思うとワクワクしてこないか?




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